沢辺京子(国立感染症研究所昆虫医科学部)

日本衛生動物学会 会長(2018-)

 

この度、第23期日本衛生動物学会学会長という大役を引き受けることになりました。幹事の皆さまと力を合わせて、日本衛生動物学会の運営と発展に尽力する所存です。会員各位のご支援とご協力をお願い申し上げます。

 

衛生動物学は、人の心身の健康に直接間接に関わる動物を扱い、それによって 起こる疾患の発症機構・予防・治療等を科学する学問です。2013年に死亡例を報告したマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は依然として西日本を中心に流行し、2014年には蚊が媒介するデング熱の国内感染例が約70年ぶりに発生したことなど記憶に新しいところでしょう。病原体を媒介する節足動物は、蚊やマダニ以外にもアブ、ヌカカ、サシチョウバエ、シラミなど多数存在します。この他にも衛生動物の被害は多岐にわたります。例えば、吸血性昆虫の刺咬による皮膚炎の惹起や皮膚の傷害、クモやサソリの致死性の毒、ハチやムカデの刺咬がアナフィラキシーショックをもたらすことも知られています。サソリやクモの姿、ダンゴムシやアリの数の多さが人を不快にし、ユスリカやイエダニが喘息や蕁麻疹を引き起こす場合もあります。寄生虫の中間宿主となる貝、感染症を伝搬するネズミやハト、木材や穀物に経済的な損失をもたらすキクイムシやゴキブリなども衛生動物の範疇です。

 

日本衛生動物学会は、1943年に衛生昆虫談話会として活動を開始し、2018年までに開催した年次集会は70回を数えます。近年の人や物流のグローバル化は、外来感染症の国内侵入を増加させ、地球規模の温暖化傾向や国民の生活様式の変化は、在来種による被害の種類や被害件数を増加させています。学会の設立当初とは、その被害の様相は大きく変わりましたが、衛生動物学会は、様々な種類の動物を対象とした、分類学、遺伝学、生理・生態学、分子生物学などの基礎研究から、病原体の媒介機構の解明、医学的見地からの種々被害への対応、ベクターコントロール手法の開発や実践などの応用研究まで、幅広い支援を行い、国際貢献、他分野との連携を推進しています。

 

学会活動の中で、学会誌発行は最も重要な側面です。第23期の活動として、1)海外ニーズに応える英文誌、国内サーベイランスに役立つ情報を提供する和文誌のさらなる充実を図ります。2)編集作業の電子化を進め、簡便な投稿、査読システムの導入を検討します。今後もインパクトのある特集を企画するなど、魅力ある学会誌を会員の皆様に提供いたします。また、3) 男女共同参画を推進し、男女を問わずポスドクや学生をも対象とした、バリアフリーな研究活動を支援しています。若手研究者の参加を歓迎し、会員層の裾野を広げるための活動を積極的に行う所存です。これらの情報や研究成果は、学会誌「衛生動物、英名Medical Entomology and Zoology」に掲載され、ホームページからもアクセスすることができます。学会発表や学会誌、学会ホームページを通じて、多くの方が衛生動物への理解を深め、興味を持っていただければ嬉しいです。

(2018年6月20日)